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外へ出た者は誰も戻らない、それでも人は外を見ようとする——ウール

地上は有毒ガスに覆われ、人類は地下144階建ての巨大施設サイロで暮らしている。

限られた資源を再利用しながら生きるこの世界では、外へ出ることは死を意味する。外の景色を見られるのは、カフェテリアのスクリーンに映る映像だけ。しかも「外へ行きたい」と口にすることすら禁じられている。

もしその言葉を発したら科されるのが「清掃の刑」だ。罪人は防護服を着せられ、地上へ送り出される。そして外に設置されたカメラのレンズを、ウールの布で磨かされる。だが、生きて戻った者は一人もいない。

なぜ人々は死ぬとわかっていながら、逃げるのではなく必ずレンズを磨くのか。

この強烈な謎から、物語は始まる。

物語の冒頭で清掃を望むのは、保安官ホルストンだ。彼は3年前、同じ刑で地上へ出た妻の後を追うため、自ら外へ出る決断をする。ここで読者は一気に引き込まれる。

妻は外で何を見たのか。

なぜ戻らなかったのか。

そして、清掃人はなぜ例外なくレンズを磨くのか。

次々と疑問が生まれ、ページをめくる手が止まらない。

ホルストンの後任として保安官に選ばれるのが、本作の主人公ジュリエット。彼女は下層の機械部で働く技術者だったが、ホルストンの残した謎を追ううちに巨大な陰謀へ巻き込まれていく。そして、ついには彼女自身も清掃の刑に処される。

しかしそのとき、ジュリエットは防護服に仕掛けられたある細工に気づく。

ここから物語はさらに大きく動き出す。

本作がおもしろい理由のひとつは、144階という縦の構造を、そのまま社会構造に落とし込んでいる点だ。

上層には行政や医療。中層には農業や育児。下層には機械部。

上にいる者ほど権力を持ち、情報も管理されている。

ジュリエットが下層から上層へ移動するたびに、新しい真実と新しい対立が見えてくる。この構造が物語に強い緊張感を生んでいる。

さらにおもしろいのは、謎が解けそうになるたびに、さらに大きな謎が現れること。

外の世界は本当に有毒なのか。

なぜIT部門が絶大な権力を握っているのか。

サイロはひとつだけなのか。

こうした疑問は続編へつながり、三部作を通して少しずつ全体像が明らかになる。

続編は『ウール』の後に『シフト』、そして『ダスト』へ続く。

著者はヒュー・ハウイー。ヨットの船長を8年間務めた後、書店で働きながら執筆を続け、2011年にAmazon Kindleで本作を発表した。自費出版から口コミで広がり、世界的ベストセラーになった異色の作品だ。

現在は「サイロ」としてApple TV+でドラマ化もされている。

原作から入っても、ドラマから入っても楽しめる。ただひとつ言えるのは、読み始めると「外には何があるのか」を知るまで止まれない作品だ。



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