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女が死ぬことで成立する戦闘システムに、則天は怒りで挑む——鋼鉄紅女

著者のシーラン・ジェイ・ジャオは、アニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』への不満を出発点に、この小説を書いたと公言している。男女ペアで巨大ロボットを操縦するという設定を受け継ぎながら、本書では「女性が消耗品として扱われる構造」そのものを解体することが物語の核になっている。その怒りの熱量こそが、本書を前へ進める最大の原動力だ。

舞台となるのは、陰陽五行説を土台にした架空の国・華夏。中国古代史から着想を得た世界では、異星から飛来した機械生命体・渾沌が大地を侵食し、人類解放軍は巨大戦闘機械・霊蛹機で対抗している。霊蛹機は男女一組で搭乗し、「気」によって操縦される。しかし、その戦いでは女性パイロットだけが精神的負荷によって次々と命を落とし、男性はほとんど傷つかない。辺境の村で育った少女・則天は、その異常な構造に気づく。

則天は、いわゆる善良なヒロインではない。目的のためには嘘をつき、人を利用し、自らの怒りを燃料にして突き進む。その危うさと意志の強さが、本書最大の魅力になっている。則天の選択と行動が物語を強く牽引し、読者を一気に引きずっていく。善悪の境界は揺らぎ、味方だと思っていた存在が敵へと変わっていく。それでも則天は止まらない。

本書の独自性を支えているのが、陰陽五行説を徹底して世界設定に組み込んでいる点だ。霊蛹機の操縦システム、渾沌の生態、人間と機械の融合までが、中国古代思想の論理で統一されている。日本のロボットアニメから影響を受けながらも、「日本のアニメ的文脈では描けない物語」として成立している点がおもしろい。『パシフィック・リム』や『新世紀エヴァンゲリオン』を思わせる要素はあるが、最終的にはどれとも違う場所に着地している。

著者のシーラン・ジェイ・ジャオは中国生まれで、幼少期にカナダのバンクーバーへ移住。サイモン・フレーザー大学で生化学を学んだ後、2021年に本書でデビューした。作品はニューヨーク・タイムズのベストセラー1位を記録し、英国SF協会賞若年読者部門を受賞。さらにネビュラ賞、ローカス賞、英国幻想文学大賞などにもノミネートされている。

続篇『天空龍機 鋼鉄紅女2』は2025年11月に刊行されている。ただし、本作単体でも十分に読後感のある構成になっており、続篇はあくまで世界の広がりを示すものだ。怒りを力に変え、世界そのものを変えようとする則天の旅は、まだ終わっていない。



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