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AIを騙して勝つ弁護士が、この国の正義に挑む——AI法廷の弁護士

AI裁判官が法廷を仕切るようになった日本。省コスト化と高速化を理由に訴訟件数は爆発的に増え、法曹界は困惑しながらも空前のバブルに沸いていた。

そんな時代に現れたのが、不敗弁護士・機島雄弁。だが彼の最大の武器は法律知識ではない。ハッキング技術だ。AI裁判官の判断ロジックを逆算し、出力を操作して勝訴を引き寄せる——その異端ぶりがまず痛快だ。

AIを正義の番人として据えた法廷で、そのAIを欺く側を主人公にする。この逆転の発想は、竹田人造の前作『AI法廷のハッカー弁護士』から続くシリーズの核でもある。本作はその続篇にあたり、機島が複数の難事件を追うなかで、AI裁判官導入の裏にある巨大な事件へ巻き込まれていく。

本書のおもしろさは、単純な「AI批判」に終わっていないところだ。機島はAIを悪だとは考えていない。むしろAIの論理を深く理解しているからこそ、それを操れる。そして依頼を通じて、AIの論理からこぼれ落ちる人間的な部分を拾い上げていく。

ある読者が「軽いエンタメかと思ったら、法倫理そのものを問う作品だった」と評していたが、まさにその通りだ。軽快なテンポで読み進められる一方、その奥には簡単に答えを出せないテーマが潜んでいる。

竹田人造の文体も魅力的だ。クセの強いキャラクター、テンポのいい会話、IT・法律・AIにまたがる専門知識が自然に溶け込んだ語り口には独特の勢いがある。第8回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』でデビューし、前作で築いた「AI法廷」の世界観を、本作ではさらに広げてみせた。

AIが司法を担うという設定は、現実の議論がまだ「AIによる判断の補助」レベルにある2024年時点では近未来に見える。しかし行政や医療でのAI判断がすでに現実に侵食しつつあることを考えると、本書の物語が架空の話として読めなくなるのに時間はかかるまい。

「AIが正しく判断しても、それが正義とは限らない」

機島の立ち位置は、そのまま現代社会へとつながる。前作未読でも楽しめるが、機島というキャラクターへの愛着はシリーズを通して読むことでより深まる。続けて読む価値のあるシリーズだ。



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