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カッコいいとはこういうことだ、とエリスンは証明してみせる——死の鳥

死の鳥の魅力を一言で言うなら、「カッコいい」に尽きる。暴力的で、怒りに満ち、猥雑で、やたらと饒舌。それなのに、一度読み始めるとページをめくる手が止まらない。技巧的に組み上げられた構成と、脳裏に焼きつく強烈なイメージが同時に成立しているところに、ハーラン・エリスン作品の魔力がある。

本書は、1979年刊行の邦訳第一作『世界の中心で愛を叫んだけもの』以来、実に37年ぶりとなる日本オリジナルの傑作選だ。収録された10篇はすべて伊藤典夫による訳で、エリスン特有の荒々しく濃密な文体を、日本語としてぎりぎりの美しさで成立させている。この翻訳の力が、本書の読み心地を決定づけていると言っていい。

冒頭を飾る「『悔い改めよ、ハーレクィン!』とチクタクマンはいった」は、1965年のヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞作。時間厳守が絶対視される管理社会に、トリックスターのハーレクィンが現れ、ゼリービーンズをばら撒いて秩序をかき乱す。コミカルな反抗劇としておもしろいだけでなく、そのまま体制批判にもなっている。遅刻魔でトラブルメーカーだったエリスン自身の姿も重なる一篇だ。

「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」は、本書でもっとも有名な作品だろう。AIが人類を滅ぼし、生き残った最後の五人を永遠の拷問に閉じ込める。死ぬことも狂うことも許されない時間の中で、叫びだけが残り続ける。

表題作「死の鳥」は、ヒューゴー賞とローカス賞を受賞した代表作だ。25万年の眠りから目覚めた男が、衰退した地球で使命を果たそうとする。物語は「これはテストだ。そのつもりで。」という一文から始まり、試験問題のような形式で進行する。神話や哲学を織り込んだ壮大な構造の中に、著者自身が愛犬アーブーを安楽死させた体験が差し込まれ、その痛みが物語に深い陰影を与えている。

そのほかにも、スロットマシンに宿る怨霊を描く「プリティ・マギー・マネーアイズ」、永遠に5歳のまま成長しない少年を描いた切ない「ジェフティは五つ」、都市の無関心を暴力的に告発する「世界の縁にたつ都市をさまよう者」など、印象的な短篇が並ぶ。

収録作の中には、一般的な意味での「SFらしさ」が薄い作品もある。しかし、エリスン自身はそもそも「SF作家」ではなく、「ファンタジスト」を名乗っていた。本書はまさしく、そんなエリスンの空想がジャンルに収まりきらない怒りと美しさを内包している。



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