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開業資金2500万円の麻辣湯投資が危険すぎる理由

5分で解説

目次

3行要約

  • ・麻辣湯はタピオカなどに続く食トレンドとして急拡大し、ヘルシー志向やSNS映えを好む層の支持を受けて店舗数が激増している。
  • ・一方で参入障壁の低さが競合の乱立を招き、高額な初期投資に対するリスクや差別化の難しさから収益性の維持が危ぶまれている。
  • ・市場にはすでに過飽和と衰退の兆候が現れており、過去の事例と同様に短期間でのブーム収束と事業者の淘汰が避けられない見通しである。

本文

タピオカブームは2019年をピークに急速に冷め込み、多くの店舗が閉店に追い込まれた後、唐揚げ専門店がその跡地を占めるという現象が相次いだ。その唐揚げもやがてトレンドの最前線から後退し、現在は麻辣湯が同じサイクルを辿ろうとしている。この流動的な食ブームの本質を理解するには、麻辣湯の急速な拡大と同時に、すでに見え始めている衰退の兆候を冷徹に分析する必要があり、それは次なるトレンドの消長を予測するための重要な示唆を与える。

麻辣湯ブームの規模は容易ならぬものとなっており、2025年の新規開業件数は3年前と比べて少なくとも8倍以上に達した。中華業界全体が2022年から2025年にかけて約31パーセント縮小する中で、麻辣湯は同期間に約8.5倍という驚異的成長を記録している。新規中華開業数における麻辣湯専門店の割合は2025年11月時点で13.4パーセントに達し、大手チェーン七宝麻辣湯は2025年2月時点で24店舗から5月には31店舗へと急拡大し、年内に50店舗以上に増えている。新規オープンの福岡や新潟、仙台では開店時に100人以上の行列が形成された。

シビアな数字の背後には、若い女性を中心とした消費者心理と、出店側の低い参入障壁が存在する。ブームの牽引役である情報感度の高い若い女性層にとって、麻辣湯の人気は三つの要因に集約される。第一に、50種類以上の具材と麺から自由に組み合わせを選べる楽しさであり、その価格は1500円程度が平均で、2000円以内で多様な食材を試せるカスタマイズ性が健康志向の消費者にとって高い付加価値を持つ。第二に、春雨が低カロリーでヘルシーという認識が定着し、罪悪感のない食べものとして機能している点にある。第三に、しましま模様の魚団子といった視覚的インパクトがSNS映えする環境を整えており、TikTokやInstagramでの拡散を加速させている。家庭用のカップ麺やレトルト商品も2025年に大量供給され、カルディなど大型量販店でも麻辣関連商品が充実してきた。

急速なブームの膨張そのものが、衰退の予兆を孕んでいる。競合の濫立は客単価の下圧迫につながり、オペレーションの再現性の高さゆえに参入企業が続出した結果、都市部では複数の競合麻辣湯店が数ブロック以内に密集する現象が現れた。客足の分散は必至であり、後発参入業者の採算性は急速に悪化する可能性が高いといえる。消費者側の視点からも、初期的なもの珍しさと健康志向への適合が麻辣湯の主要な需要源であった以上、この二つの要因が剥落するとき、リピート需要への転換は極めて困難になる。実際、タピオカブームの衰退過程では、希少性の喪失と飽和が急速に顧客の関心を奪い去った。

フランチャイズ展開が加速している点も、潜在的なリスク要因として挙げられる。七宝麻辣湯は首都圏に100枠以上の新規出店を計画しており、開業資金として2500万円から必要とされる。この資金規模はタピオカブーム期の低資本参入と異なり、失敗時のダメージが大きいといわざるを得ない。また、調理過程の単純性と小型出店適性は、初期段階では高い利益率をもたらすが、競争の激化とともに商品差別化が困難になり、価格競争へと陥る傾向が過去の事例で繰り返されてきた。

ブームが終わりに向かう兆候はすでに現れている。過飽和市場では、本来の繁盛店も客数の減少を感知し始める段階に入りつつあり、新規出店による成長曲線が鈍化することは不可避である。大型メディアの取り上げが増えるタイミングは一般的にブームのピークを示唆し、その後は急速な浸透と同時に、新規性の喪失による需要減退が後続する。タピオカや唐揚げが辿った軌跡を踏襲すれば、麻辣湯も1年から2年程度で調整局面に入る可能性が高いだろう。

一連の現象が示唆するのは、日本の食トレンド市場が極めて短期的で、消費者の関心が急速に移動する環境であり、その中で後発参入した事業者の多くは当初の高い利益率を維持することが難しくなるという構造的現実である。健康志向の高まりやカスタマイズニーズは継続的なトレンドであるが、特定の食業態がそれを独占できる期間は限定的といえる。現在の麻辣湯の繁盛は次のブームまでの一時的な繁栄であり、ブーム終焉時には採算性の悪化と大量淘汰が必然的に到来する段階がすでに始まっているのである。

元ネタ

タピオカ、唐揚げの“次”になる…?「麻辣湯」の店が乱立する理由と、“ブームの終わり”がすでに始まっているかもしれないワケ



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