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目次
3行要約
- ・若者のSNS利用はオープンな場から親しい友人限定のクローズドな場へと移行し、位置情報共有アプリが急速に浸透しています。
- ・位置や未加工写真の共有は、連絡の手間を省く効率性と心理的な距離を縮める効果があり、タイパを重視する世代の価値観に合致します。
- ・広くて浅いつながりへの反動から狭く深い関係性が再評価され、フォロワー数よりも内輪の親密さを重視する質的な転換が進んでいます。
本文
位置情報共有アプリが急速に浸透する背景には、若者のSNS利用形態における根本的な変化があります。従来のオープンなSNS時代からクローズド化へのシフトが進み、親しい友人限定のコミュニケーションが主流化しているのです。このトレンドの規模感を示す事例が、リンキュー社が運営するwhooyourworldです。累計ダウンロード数は3000万に達し、利用者の約8割を10~20歳代が占めています。
このアプリの利便性は、今何してる?という確認手段を省き、画面を開けば友人のバイト中か自宅にいるかが一目でわかる効率性にあります。都内の大学生松田健佑さんが「気兼ねなく誘える」と述べるように、位置情報の共有によって相手の状況を推測する手間が削減されるため、タイパを重視する若者の価値観と合致しています。買い物ついでに友人をお茶に誘うついで会いといった使い方が生まれるのも、このタイムパフォーマンス指向を反映したものです。
同様の文脈で支持を集めているのが、BeReal.というサービスです。1日1回の不規則な通知に応じて、原則2分以内に加工できない写真を投稿する仕組みで、親しい友人とだけつながるプラットフォームとして機能しています。日本国内のユーザーは約500万人で、Z世代(14~27歳)が約83%を占めます。ユーザーから「ありのままの姿を見せることになるため、その人の個性や私生活が見えてくる」という評価があり、ほかのSNSとは異なる信頼感を生み出しています。
こうした現象について専門家は、より深い構造を指摘します。芝浦工業大学の原田曜平教授は「位置情報の共有は親しい間柄の友人とだけで行われるのがほとんど」と述べ、近年のSNS利用形態の二極化を強調しています。許可した人にしか見えない鍵付きアカウントでのやりとりが主流になるなど、つながる相手を限定するようになっているという指摘は、SNS全体のクローズド化傾向を浮き彫りにしています。また、博報堂のマーケティングプランナー奥村耕成さんは、「位置情報や未加工の写真のように、開示がためらわれる情報を共有することが、友人との親密性や連帯感を高めている可能性がある」と分析しています。個人情報に近い情報ほど、それを共有する相手との心理的な距離を縮める効果があるというメカニズムが働いているのです。
これまでSNS普及による友人関係の細分化は、若者たちに広くて浅いつながりを強いてきました。学校や趣味のグループを使い分ける構造が定着してきましたが、コロナ禍を経験した若者たちの間では、その反動として心を許し合い、狭くて深い関係が築ける相手を求める傾向が強まっています。サイニング社の牧之段直也さんが「友人関係の二極化は今後も続く」と指摘するように、位置情報共有アプリはこの欲求の受け皿となっています。実務的には、親密性を示す情報の共有によって相手との間に一種の内輪感が生まれ、自分たちだけの親密なコミュニティが形成される感覚が芽生えます。SNSの使い方がフォロワー数の多さを競う段階から、仲のいい友人とより親密になるためへとシフトしているこの変化は、情報社会における人間関係の質的な転換を示しているといえるでしょう。
元ネタ
親しい友人と位置情報共有し「ご飯行かない?」…クローズド化進むSNSと「深いつながり」求める若者

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