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関西の百貨店、ホテルが〝脱中国〟の動き加速 優遇・偏重見直し 春節でも依存リスク鮮明
中国の春節連休入りにもかかわらず、関西の百貨店・ホテルが高市早苗首相の台湾有事発言に端を発する中国政府の訪日自粛要請を受け、静かな書き入れ時を迎えている。かつて中国人客に最も依存してきたエリアだからこそ、その反動として脱中国を加速させざるを得ない構図が浮かび上がる。これは単に一地域の不振ではなく、日本のインバウンド構造全体にかかわる集中リスクとして認識されつつある点が重要である。
このリスクは、すでに具体的な数字として表面化している。日本政府観光局によれば、昨年12月の中国人訪日客数は前年同月比約45%減の約33万人にとどまり、年明け以降も減少傾向が続いている。大阪観光局の推計でも、大阪府を訪れた中国人客は同じく45%減の17万6千人で、年間の中国人客522万5千人が仮に半減すれば、韓国人客274万4千人分に匹敵する規模の需要が消えると警戒している。百貨店業界も同様で、日本百貨店協会によると、昨年12月の全国百貨店における中国人客数と免税売上高はいずれも前年同月比で約4割減となり、これまで進めてきた中国シフトの逆回転によってインバウンド頼みの構造が脆弱だったことを露呈した。大阪の既存店では12月の売上高が前年同月比2.4%減と、全国平均の1.1%減を上回る落ち込みであり、免税売上減の影響が特に大きかったとされる。
こうした状況を受け、企業側は特定の国に依存しないビジネスモデルへの転換を急いでいる。象徴的なのが大丸心斎橋店による情報発信の切り替えである。同店は中国本土からは公式にはアクセスしにくいインスタグラムをあえて活用し、英語と韓国語に加え、台湾や香港で使われる繁体字中国語で催事や売り場の動画をリアルタイム配信することで、ターゲットを中華圏全体や他国へ広げようとしている。ここには中国だけを優遇するモデルから、言語・地域をまたぐ横展開型インバウンド戦略へと軸足を移す意思が読み取れる。
宿泊業においてもリスク分散への動きは顕著である。関西のある大手ホテルでは、中国人の宿泊が団体を含めて前年同期比で約80%減少したとされ、担当者は大阪・関西万博での利用実績を踏まえつつ中国以外の国・地域への営業を急ぎたいと語っている。一方で星野リゾートのように、欧米や台湾、国内客の増加によって中国人減少を相殺し、客室稼働率は1月以降も前年並みを維持している事例もある。同社は観光立国として中国を含むアジア客への依存そのものは避け難いとしつつも、リスク分散の必要性を指摘している。
この変化を戦略的な好機と捉える視点も存在する。関西のシンクタンク関係者は、今回の減少局面を中国以外の観光客を獲得するチャンスと捉えるべきだとし、滞在当たりの消費額が大きい欧米客や、経済成長が著しい東南アジア・新興国からの誘客の重要性を強調している。観光客の国籍ポートフォリオを平準化することが、オーバーツーリズムの緩和やコンテンツ多様化にもつながるとの見方である。ここで言う脱中国とは、必ずしも中国市場からの撤退や対立を意味するものではなく、単一市場依存からのリスク管理・収益多角化という経営上の要請として理解すべきである。特定国の比重が高すぎるビジネスモデルは、企業にとって地政学リスクの内面化に等しく、関西はいまようやくリスク・リターンの再計算が迫られていると言えるだろう。
ただし、ターゲットの切り替えには実務上の高いハードルが伴うことにも留意が必要である。直近1月の速報では、大阪市内の主要百貨店で国内客が増加し、前年実績を上回る店舗も出ていると報じられているが、免税売上減を完全に埋める水準には至っていない。欧米や東南アジア客を増やせば自動的に中国減少分を補えるわけではなく、団体旅行中心の中国人客と個人手配が多い欧米客とでは、求める体験や利用チャネル、単価構成が大きく異なるからである。百貨店・ホテルが脱中国を掲げるだけでなく、その裏付けとなるデジタルマーケティングと、商品設計や人員配置を含む現場オペレーションの刷新をどこまで踏み込んで実行できるかが、関西インバウンドの実力を測る試金石となるはずである。

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