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納期半減の無茶振りか高市首相が予算年度内成立にこだわる真意

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時事オピニオン

<1分で解説>高市首相「年度内の予算成立を」 自民内に反発の声も

3行要約

  • ・高市首相は2026年度予算の年度内成立を強く指示したが、解散による日程遅延で審議期間が通常の半分程度となるため、党内からは実現困難との声や暫定予算編成への動きが出ている。
  • ・首相が成立を急ぐ背景には遅延批判の回避と独自色法案の推進という狙いがあるものの、拙速な審議進行は与野党の反発を招き、国会運営に支障をきたす懸念が高まっている。
  • ・積極財政を掲げながら自らの政治判断で予算執行を遅らせかねない現状は矛盾しており、首相が掲げる目標と現実的な対応の乖離が政権の信頼性を左右する試金石となっている。

高市早苗首相は13日、自民党の梶山弘志国対委員長や萩生田光一幹事長代行らと官邸で会談し、18日召集の特別国会で2026年度当初予算の年度内成立を目指してほしいと指示した。首相自身も年度内成立を諦めていないと強調しており、3月末までの成立を強い政治目標として掲げている。しかし、この強気の目標設定に対し、自民党内からは早くも無理難題だとの声が上がっている。

今年の予算審議が遅れている背景には、高市首相が1月に衆院を解散したことがあると報じられている。通常、当初予算の審議は1月下旬ごろに始まり、衆院と参院でそれぞれ約1カ月をかけて3月末までに成立させるのが一般的とされる。ところが今回は、衆院選を経て特別国会の召集が18日にずれ込み、予算案の審議入りも2月末から3月初めごろになる見通しだとされている。

そうなると、年度内成立には例年の約2倍のスピードで審議を進めなければならないという試算も示されている。具体的には、衆院と参院それぞれで約2週間程度で審議を終える必要があるとされ、自民党のベテラン議員は予算審議を2週間で終えるなんて想像がつかないと率直な戸惑いを語っている。形式上は十分な日数を確保しても、実質的な議論の密度や与野党双方による検証機能が維持できるのかという懸念は避けがたい。

一方で政府側は、予算成立が4月以降にずれ込むシナリオも現実的なものとして織り込み始めている。自民党内では、政府が最低限の経費を賄う暫定予算案の編成準備を進めているとの報道もあり、首相周辺が掲げる年度内成立と、実務サイドのずれ込みを前提とした備えとのギャップが浮かび上がる。党幹部から困難との見方が大勢だとされるのも、その現実認識の表れとみることができる。

それでも首相が年度内を強調する背景として、報道各社は二つのポイントを指摘している。一つは、自らの解散判断によって当初予算の成立が遅れたとの批判を和らげたいという思惑である。もう一つは、衆院選の大勝を追い風に、当初予算成立後に国家情報局の設置法案など高市カラーの強い法案審議を一気に進めたいという政権運営上の優先課題がある。年度内成立は単なるスケジュールの問題ではなく、選挙で得た政治的勢いをどこまで維持できるかという勝負どころと位置付けられている。

ただし、その強硬姿勢は与党内からも必ずしも歓迎されていない。自民党内には国会運営は丁寧に進めるべきだとして、審議時間の大幅な圧縮に慎重な声も出ている。実際、与党側の質問時間を削るなどして予算審議を例年より短縮する案が浮上しているが、野党の反発は避けられないと報じられている。与党が自らの質問時間を削る形でスピード審議を図れば、政府へのチェックを自ら弱めたとの批判と、野党の質問を締め付けたとの反発を同時に招きかねない。

財政運営という観点から見ると、この状況は高市政権の掲げる方針とも微妙な緊張関係にある。高市首相は行き過ぎた緊縮志向の流れを終わらせると述べ、必要な予算は当初予算で措置するという方針を打ち出してきた。補正予算頼みからの脱却を掲げ、本来であれば2026年度当初予算こそが責任ある積極財政を具体化する中核ツールとなるはずだった。

ところが、ロイターなどは高市解散によって予算審議が遅れ、想定よりも予算執行が後ろ倒しになれば、好調な景気に影響しかねないとの見方を伝えている。日銀も成長率見通しの引き上げを検討する中で、この予算遅延リスクを注視しているとされる。つまり、首相が掲げる積極財政による景気下支えと、自らの政治日程が引き起こした予算の遅延リスクとが、同じタイミングで政策評価の俎上に載せられつつある構図である。

国会日程全体を見渡すと、特別国会の会期は150日間とされており、時間そのものは長い。にもかかわらず予算審議を極端に圧縮しようとしている点は、後半戦でどれだけ高市カラーの法案を通すつもりなのかという疑問とセットで見られざるを得ない。国家情報局関連法案に限らず、連立与党との政策合意や野党との駆け引きが絡むテーマが目白押しになると予想される中で、最初の大型案件である当初予算の扱いは政権の姿勢を占う試金石となる。

今回の年度内成立要請は、高市首相の政治的な意欲とリスクテイクの両面を象徴している。与党内から無理難題との本音が漏れ、政府自ら暫定予算の準備を進めざるを得ない中で、首相がどこまで目標に固執し、どこで現実路線へと舵を切るのかが今後の焦点となる。年度内成立を強く求めるのであればこそ、そのプロセスが拙速ではなく丁寧な説明と議論を尽くした結果と国民に映るかどうかが、政権の信頼性を左右することになる。



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