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2024年春から夏にかけて、日本マクドナルドが公開したマックフライポテトのAI生成CMは、X上で3日間で5万件以上の批判投稿を集めました。指が6本に見えるといった技術的な瑕疵のみならず、映像に一貫性がなく手抜きした制作感が指摘されたためです。同様に12月には、大手文具メーカーのサクラクレパスがスペインのイベント用ポスターにAI生成イラストを使用していたことが発覚し、商品の誤描写やロゴの不備などデザインチェックの不十分さが明るみに出ました。これらの事例は、AI活用における品質管理と誠実さの欠如がブランド毀損を招くリスクを浮き彫りにしています。
対照的に、2026年元日に大正製薬が公開したリポビタンDの新CMリポビタンDaysは、生成AI技術を活用しながらも大炎上には至らず、一定の受容を得ています。その要因は、AIの使い方に対するアプローチの違いにあります。このCMは特定のタレントを再現するのではなく、多様な頑張る若者たちの姿を描き出しており、クリエイティブディレクターを務めた蛍光TOKYO前田康二氏は、通常のCMと同様に演出コンテを制作して全体設計をおこない、編集に約2ヶ月を要して人の感性とこだわりを重ねて仕上げたと説明しています。つまり、単なる生成ではなく、人間とAIの対話によるコラボレーションが実現されているのです。
このコラボレーションが示す成功の鍵は、広告業界が指摘する2つのポイントに集約されます。第一に、制作意図を隠蔽せず透明性を確保することでだましを避けること。第二に、人間の感性を上乗せして手抜きを避けることです。さらにリポビタンDの事例では、見せたいものがAIになっていない点も重要です。炎上事例では技術的なアピールが主役になりがちですが、同CMはAIを意識させすぎない現実感のラインに置き、特別な瞬間を支えるから日常の何気ない日々を支えるへの商品のポジショニング変化を伝えることに専念しています。
手段としてのAI活用において企業が留意すべきは、消費者の心理的な受容ラインです。消費者調査では54%がAI広告だと知っても購入に影響がないと答える一方で、約45%が何らかの懸念を抱いています。ここで重要なのは、消費者が懸念しているのはAIが使われた事実そのものではなく、実在の商品とのギャップや人間味の有無といった最終的なアウトプットの品質だということです。ブランドが積み重ねてきた信頼や価値観が、ある瞬間の説明不足で不誠実へと反転するリスクがあるなか、企業は今、誠実なクリエイティブとの向き合い方を問われています。
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