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荒唐無稽な設定が、ゴリゴリのハードSFとして機能する——神々の歩法

宮澤伊織『神々の歩法』は、突飛な設定を、きわめて理詰めのSFとして成立させた一冊だ。魚座の超新星爆発を起点に、高次元知性体が地球へ飛来し、人間と融合して「憑依体」となる——という導入だけでも十分に強いが、本作の魅力は、その派手さを支える設定の精密さにある。

とりわけ印象的なのが、「歩法」と呼ばれる能力の扱いだ。三次元を超えた領域への干渉として現象を組み立てることで、作品世界には単なる超能力ではない、物理法則の延長としての説得力が与えられている。見た目はB級アクション的に豪快でも、内側には硬質なSFの骨格が通っている。そのねじれこそが、本作の最大の面白さだ。

全4話の連作として構成されている点もよく効いている。北京、岩手、コンゴ共和国と舞台が移るたびに、土地の空気と憑依体の性質が噛み合い、物語に新しい推進力が生まれる。世界の広がりと、各話ごとの局所的な緊張感が両立しており、連作としての完成度も高い。

中心にいるニーナの存在も重要だ。理性を保ったまま憑依体となった彼女は、圧倒的な力の象徴であると同時に、人間であろうとする意志を抱えた存在でもある。その葛藤は大きく語られすぎないぶん、会話や行動の端々から浮かび上がる。だからこそ、サイボーグ部隊の仲間たちとの関係性の変化にも重みが生まれる。

短編賞受賞作を含む複数の話に書き下ろしを加えた本書は、宮澤伊織という作家の振れ幅を知るうえでも格好の一冊だ。奇抜さだけで終わらず、設定と感情をきちんと接続してみせる。その手腕に、この作家らしい強さがある。



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