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CEOよりCTOが稼ぐAI時代の富の法則

5分で解説

目次

3行要約

  • ・米Cognitionの企業価値が約1.59兆円に達し、技術トップであるCTOがCEOを凌ぐ資産を築くなどAI分野での技術的リーダーシップが高く評価されている。
  • ・コード生成AIのDevinは短期間で驚異的な収益成長を遂げ、エンジニアリング作業の自動化が実務レベルで浸透しつつある現状を示している。
  • ・巨額の富の裏側には過酷な労働環境や未上場株特有のリスクも存在し、日本のビジネスパーソンにも成長性と持続可能性を見極める視点が求められる。

本文

米CognitionのCTO、スティーブン・ハオが推定資産13億ドル(約2028億円)のビリオネアとなったと報じられた。きっかけは2025年9月の資金調達であり、同社は4億ドル(約624億円)を調達して企業価値は102億ドル(約1.59兆円)に達したとされる。同社株式を多く保有するハオの持分評価額はこのラウンド時点で13億ドルに達し、共同創業者でプロダクト責任者のウォルデン・ヤンが約8億3000万ドル、CEOのスコット・ウーが約6億ドル規模と推計されている。ここで注目すべきは、今回もっとも大きな富を手にしたのがCEOではなくCTOである点である。フォーブスの推計によれば、3人の共同創業者のうちもっとも小さい持分を持つのがCEOのウーであり、技術責任者であるハオが最大の株主とみられている。これはAIエージェントというプロダクトの性質上、技術そのものが企業価値の源泉と市場にみなされていることの裏返しであり、プロダクト設計と研究開発のリーダーシップを握る人材が資本市場から直接的に評価される構図が浮かび上がる。こうしたAIブームが生み出した資産形成は同社に限らず、コード作成ツールCursorの共同創業者たちも純資産13億ドル規模と推計されるなど、バリューチェーン各所で紙の富が量産されている。

Cognitionはバイブコーディングと呼ばれる新しい開発様式の有力プレイヤーと位置づけられている。自然言語で指示を与えるだけでウェブサイトやアプリケーションを自動構築できるコード生成AIのDevinを提供し、シティバンクやフィンテック企業Rampなどが導入企業として名を連ねる。エンジニアはプロンプトを入力するだけでコード生成や既存コードベースの保守を任せることができ、反復的な作業をAIエージェントにオフロードするという位置付けである。市場では、同じくバイブコーディングを掲げるCursorや、コード生成能力に定評のあるAnthropicのClaudeと競合している。事業の実態をみると、Devinの年間定額収入は2024年9月の100万ドルから2025年6月には7300万ドルへと伸び、70倍以上の成長とされる。同社は創業後2年間、月次の純損失を2000万ドル以下に抑えてきたとされ、資本効率のよさが投資家の安心材料になっている。金利高と投資家の選別姿勢が続く中でも、コード生成AIというテーマに対しては依然として高い期待が織り込まれており、同社は100億ドル企業の仲間入りを果たした格好である。

急速な事業拡大の一方で、高圧的な経営体制や労働環境の課題も指摘されている。報道によれば、従業員30人の解雇と残る約200人への退職オファー、週80時間・週6日勤務という極端な働き方が行われており、この成長モデルの持続可能性には疑問も投げかけられている。加えて、創業者らが手にした富の多くは未上場株式の評価に基づくものであり、流動性と持続性の点では不確実性が大きい。今回の推定純資産は、特定のラウンド時点の企業価値と持分比率を掛け合わせた帳簿上の数字であり、市場環境や業績の変化次第で大きく上下し得る。AIユニコーンの一部ではすでにダウンラウンドも出始めており、ハイバリュエーションゆえのリスクも看過できない状況である。

それでもなお、Cognitionの事例はソフトウェアエンジニアリングそのものがAIによって再定義されつつあることを象徴している。Devinが大企業の本番環境で採用され始めているという事実は、AIエージェントが単なるデモではなく実務プロセスに組み込まれる段階に入ったことを示している。コーディングという専門的な作業が自然言語インターフェースを通じて誰もが扱えるものに近づけば、開発組織の設計やスキルポートフォリオも変わらざるを得ない。日本の読者にとって重要なのは、AIエージェント×開発生産性というテーマが単なる技術トレンドを超えて巨額の資本配分と富の再分配を呼び込んでいる点である。世界市場を前提にプロダクトを設計すれば、短期間で100億ドル企業になり得ることが示された一方で、その裏側には過酷な労働慣行や高い成長プレッシャーも存在しており、日本のスタートアップがどの部分を取り入れ、どの部分に距離を置くのかという選別眼が問われている。

元ネタ

資産2028億円の新AIビリオネア、バイブコーディング新興Cognitionから誕生



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