めちゃくちゃおもしろくて、ひっさびさに最後まで本を読み終えることができました。いや、できてしまったといったほうが、読了感想に近いかもしれません。個人的な読書スタイルとして、物語の骨格を構成しているところでへんなつっかかりを覚えた瞬間に読み捨てているので、最後まで読み進められるのは本当にまれ。「いったん読み始めた本は最後まで読み切る」的ビル・ゲイツ読書法とは真逆の姿勢というか、最後まで読む価値があるかどうかを直前までリサーチせずに乱読するタイプの弊害というか、そういう性質なものでして、数多の本から最後まで読み通せるものを抜き出すのは、砂漠の中から一粒の砂金を見つけたくらいの感動ものなのです!
てなわけで、読み終えた嬉しさもハンパねぇ

ので、衝動の赴くままにペンを走らせることにしました。
舞台は、人類が「ケンタウルス人」という謎の異星種族と戦っている惑星セーフハーバー。そこで暮らす17歳の青年レヴ・ペレティエは、恋人に格好をつけたいという些細な動機から交通違反で有罪となりました。些細な事件、と思いきや、兵役をいい渡されてしまったレヴ。というのも、戦力不足から軽微犯罪者までが兵役対象に組み込まれていたのです。そして、25年の奴隷労働か3年間の直接戦闘——死亡率78パーセントという極限的な任務——の選択を選ばざるをえなくなったレヴは、戦闘任務を選びました。苛酷な訓練を経て遺伝子改変と身体拡張を受けたレヴは、いつしか自分を証明したいという欲望と組織への適応が融合し、怠け者だった少年は自覚的な戦士へと変貌していきます。戦地赴任前の帰郷の際に、彼は義父に「いまはわくわくしてる。自分自身を証明したいと願っているんだ」と語るように、組織の非人道的な強制下にありながらも、矛盾した高揚感を覚えているのです。本作は個人的な願望が軍事組織への無邪気な信仰へと変質する人間精神の脆さを問い直しながら、テンポよく戦闘シーンを展開させていく作品となっています。
J・N・チェイニーおよびジョナサン・P・ブレイジーによる『戦士強制志願』(原著:Sentenced to War)は、2024年4月5日にハヤカワ文庫SFから日本語版が刊行されたミリタリーSF小説です。アメリカ空軍経験者のチェイニーと、米海兵隊大佐経歴を持つブレイジーの共著作であり、兵役制度と個人の成長というテーマを中核に据えた作品として注目されました。原著は既に15巻を数える人気シリーズの第一巻であり、ドラゴン賞ミリタリSF・ファンタジイ部門の候補にも選出されるなど、欧米圏での定評の高さがうかがえます。
主人公の基本的性質は権威に歯向かう系。言葉を選ばずにいうと、人からあれこれいわれるのを極端に嫌うクソガキ。プライドが高いくせに、怠け者で、共感性が低いというトンデモ野郎なのですが、海兵隊としての過酷な日々を過ごす中で、精悍な漢へと変貌を遂げます。もっというと、アメリカ海兵隊のモットーともいうべき「センパー・ファイ(つねに忠誠を)」の精神が受け継がれていくのです。つねに忠誠を、という言葉に内包される無邪気さ。それがもたらす効能がいいかわるいかどうかを論ずると本題から大幅にずれていくと思うのですが、あくまで本書に限った場合、いい方向に主人公が矯正されています。
このストーリーはすこぶる王道。びっくりするくらい先の展開が読めるので味薄め? と思いきや、筆者の空軍としての経歴から生み出された詳細な描写のおかげで味濃いめ。しかも、専門用語は用語集としてまとめてくれている親切設計。……個人的には、『ディファレンス・エンジン』のような専門用語で本一冊書ける本が好きだったりする。……ただ、ハードSFばりに設定がカタいわけでもなく、そのあたりはヤワめ。SF感もそれほどないので、若い海兵隊が仲間との絆を介して成長していくミリタリものとして読むのがいいと思います。
生涯に一度は手に取って読んで欲しい。そんな一冊です。
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